卒業論文取材:協力事例


●2013年3月:論文タイトル 「障害者の性介助における意識への考察 〜ノーマライゼーションの理念から〜」

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 序章

本研究では、従来タブー視されてきた障害者の性をノーマライゼーションの理念から性の確立を目指し性支援や性介助を取り入れるため、障害者の性を業務内とし、正しい性知識を持つ専門職の育成を図ることを前提とする。そして障害者の性を障害者個人の問題ではなく、社会の問題として捉えることとする。また、障害者の性介助に関わる者たちの意識にはノーマライゼーションの理念が根底にあると主張する。

では、なぜこのようなことを述べなくてはならないのか。まず初めに従来この問題について、障害者を性のなき者とし、性支援・性介助が検討すらされず、福祉職・障害者家族内ではタブー視されてきた。また、障害者自身も性的欲求を表に出すことはなかった。それは以下の理由からである。

1、 医学的に障害者に性がない者であるという概念は間違いである。夜這い文化があった時代には障害者が近親間で性行為、また妊娠したという事実がある。そして川平の調査によると身体障害児は健常児と比べ、初潮の遅れは少なく、射精の遅れは目立つが、それは身体の不自由さから自慰が出来ないからである。そのため、性的成熟に問題はないと明らかになっている。(川平、1988、p485)

2、1948年に施行、公布された優生保護法は障害者に対し、社会から生殖機能を無くす優生手術が黙認され、障害者を守るべき存在であった福祉職は月経時の介護負担軽減のために優生手術を助長させたのである。つまり性ある者であった障害者は福祉職の都合のいいように性なき者にされてしまったのである。また、障害者は社会がまず男性、女性として見るのではなく、障害者として見るために二重に差別されているといえる。障害者は男性、女性というイメージに捉われるが故に性ある者である自身に悩み、自らを性なき者のように振る舞ってしまうのだと考える。

3、在宅の障害者は自慰が出来ない場合、家族(特に介護者になりやすい母親)が性介助を行う場合がある。そのため、羞恥心から性的欲求を自ら抑圧してしまう傾向がある。両親は子どもが性的関心を持っているということ自体にストレスを感じやすい。その結果、子ども(障害者)の性に対して見て見ぬふりをしがちである。また、性は現代社会では厭らしいもの、恥ずかしいものとされてきており、性に関しての偏見もあると考えられる。

4、川平らの調査により障害者に関わる福祉職の性介助・性教育について偏見や寛容のなさが明らかとなっている。障害者にとって身近な福祉職、特に指導員と寮母は性知識または寛容さが低く、性知識を身につけている理学療法士・作業療法士は比較的性に寛容であるという調査結果がある。(川平東郷・田中・堤下・片平・芦谷・福留、1990、p759)

また、介護ボランティアの語りから経験や自身の性経験、性の価値観が障害者の性への対応に大きく関わってくると考える。つまり性知識や経験が深まるにつれ、性に対して寛容になるのである。福祉職の性に対しての知識、経験のなさは障害者の性支援・性教育に大きな弊害であると考える。

先行研究では1950年代にバンク=ミッケルセンが提唱した、障害者にも健常者と同じような生活条件を提供するべきだというノーマライゼーションの理念から、障害者の性についても健常者と同等になるよう支援していくべきであると論じられている。

また、社会福祉・障害者福祉は当事者の生活に関与するものであり、個人の生活に基本的な欲求である性がある以上、福祉職は当事者の生活の質向上のために性支援や性介助を支援として取り入れるべきである。

筆者は性ある者である障害者がノーマライゼーションの理念から取り残されてしまっており、障害者が対等な市民として扱われているとはいえないと考える。

また従来、性介助が行われていても障害者と一部の福祉職間の問題、つまりはミクロレベルの問題とされ、公にされてこなかった。しかしミクロレベルの問題とされていては、いつまでも社会の認識は障害者が性を求めることは我儘であり、障害者個人の問題というところから進化しない。障害者の性が認められるためにはまずは障害者の性を社会の問題、メゾ、マクロレベルで支援していくことが必要であると考える。

そして現在の日本の福祉にはノーマライゼーションの理念が根付いており、性介助に関わる者の意識の根底にはノーマライゼーションの理念があると考える。

筆者は高校時代、河合著の「セックスボランティア」を読んだことから障害者の性に対し関心を持つようになった。そして大学で福祉を学び、障害者の性に関するカリキュラムがないこと、障害者の性が影の問題として語られないことに疑問を抱くようになった。

そして卒業論文のテーマを障害者の性にすると友人に話した際に、笑われ、明らかに距離を置かれたことが筆者にとって、とても衝撃的な出来事であった。その際に社会の障害者の性やそれに関わる者に対する偏見を初めて意識し、改めて研究してみようと意識したのである。

「セックスボランティア」には施設に暮らしている脳性麻痺により、両上肢機能障害・移動機能障害(身体障害者程度一級)を持つ69歳の男性が登場する。男性は施設の社会福祉士の職員に風俗にいく際、介助を受けている。男性は気管切開により酸素吸入器は24時間着用していなければならない。男性は自身の性について次のように語る。


 現在、竹田さんは障害者年金をやりくりしたお金で、年に一回正月か誕生日に、吉原のソープランドに行くことを楽しみにしている。/竹田さんは、二十四時間寝ている間も離さない生命維持装置の酸素ボンベを、そのときだけは外すことに決めている。二時間の行為の間、大きな二本のボンベは邪魔だからだ。「いき は くるしい おっぱいに こども のように むしゃぶりつくのが すき」/死んでしまうリスクもある。「そのとき は そのとき せい は いきる こんぽん やめるわけ にはいかない」(河合、2006、p22−23)

その後、竹田さんは気管から出血し、入院した。「いよいよか」と心配した佐藤さんが、「最後に誰に会いたい?」と尋ねると、竹田さんは、肉親でもなく友人でもなく、「ソープランド ノ キョウコ サン」と言ったという。/七十歳を越え、障害を持ち、死をかけて、命綱の酸素ボンベをはずしても性を人は手放せない。(河合、2006、p251)


このように男性は最期の最期まで性に執着した。それは人によっては滑稽で、性欲に溺れた者という印象を受けるであろう。だが、そうなのだろうか。性は快楽を満たすためだけではない。性は自尊心、そしてアイデンティティ形成の役割がある。つまり、性は人間にとって切っても切り離せないものなのである。

男性は生きる喜びを実感し、生きている意味を追い求めていたのではないだろうか。筆者にはその姿を滑稽だとも、惨めだとも感じることはできない。

本研究ではこの問題を以下のように述べていく。

第一章では従来性なき者といわれてきた障害者は決して性なき者ではないということを明らかにすることを目的とし、第一節で人間にとっての性の重要さ、身体障害者にも性機能はあることを述べた。

第二節は性なき者と認識されるようになった背景に優生保護法による優生手術があると述べる。第三節では障害者も社会のイメージに捉われるが故に自身を性なき者に意図的にしていると述べる。

第二章では性介助はノーマライゼーションの理念から行われるべきであり、障害者の性は生活の質に繋がり、福祉職の業務範囲であると明らかにすることを目的とする。

第一節は障害者を取り巻く性介助の妨げを3つ述べ、第二節では障害者の性は福祉職の業務範囲であり、生活の質に繋がると述べる。また、性介助の定義を定める。

第三章では一般社団法人ホワイトハンズの代表者、ケアスタッフ、利用者の3者にインタビューを行い、性介助に関する問題や課題に対する3者の意識を考察することを目的とした。

第一節は障害者の性や性介助を取り巻く現状や課題、それにおける福祉職の抵抗感を述べ、第二節はホワイトハンズにおける性介助の現状や課題、問題、そしてそれにおける健常者の障害者における意識の在り方、性介助への特別視を述べる。三節では3者の性介助への制度化や普及させるためにどのような取り組みをしていくのかの各々の考えを述べる。

四節ではこれまでのインタビューの語りから性介助への課題、問題点についての3者の意見を考察し、性介助はミクロレベルの問題ではなく、メゾ、マクロレベルの問題であるということ。そして性介助に関わる者の意識はバンク=ミッケルセンのノーマライゼーションの理念に基づいていると述べる。また、障害者の性への課題について述べていく。

 本研究の研究方法として一般社団法人ホワイトハンズの代表者、ケアスタッフ、利用者にインタビューを行い、録音された音声から逐語録を起こし、それを大まかに9種類の問題、課題についてカテゴリー分けをする。そして3者の語りから性介助に関わる問題や課題への意識を考察していく。


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